2025/04/15 00:00
先日、ある企業の新入社員研修で奈良県の曽爾村というところに行ってきました。

曽爾村。もちろん初めて行きましたが、なんとなく僕の実家と同じ匂いがして懐かしかったです。
鹿も、そこら中にいました。
僕の役目は「コンディショニング」の講師でした。わかりやすく言うと筋力トレーニングやストレッチです。
今やどの企業も従業員の健康というものをしっかり考えるようになりました。
結局のところ、生きているうちは皆アスリートです。球場やアリーナが舞台のプロアスリートだけではなく、調理や接客、車の運転、医療やモノづくりなど、皆それぞれの舞台があります。その舞台になるべく良いコンディションで立つ為のいろいろなアプローチがコンディショニングです。誰でも舞台に立つための準備(コンディショニング)が必要ですし、企業はその準備に対する環境や知識などの支援をしなくてはなりません。
とは言えコンディショニング全般になると食事や睡眠も含まれて膨大な情報量になるので、まず筋骨格系のコンディショニングに絞り、優先順位、再現性を踏まえ、そして今回の企業様の業種的にも「良い姿勢」と言うものをテーマにコンディショニング(ここではストレッチやトレーニング)の話をしました。
姿勢を整える事だけを考えたコンディショニングではなく、「人体の構造」や「関節の特性」から考えて、誰にでも必要なシンプルなコンディショニングを行なった「結果」として姿勢が整うと言うこと、良い姿勢を保つことで外見だけで無く肩こりや腰痛、その他あらゆる疾患の予防になるということを伝えました。
そしてその効果はコンディショニングを継続することでしか得る事が出来ない、逆に言えば継続さえすれば誰でもコンディションは良い方向に向かうということを伝えました。
従業員が心身ともに健康であることが企業にとってどれだけの利益をもたらすのかを考えると、ものすごく意義のある時間だったと思います。
問題はこの後で、今回いただいた依頼の中に「ソーラン節の指導」がありました。いわゆる南中ソーランですね。
僕も20年以上踊っています。
確かにソーラン節は動きがシンプルで、誰でもある程度の時間で踊れるようになって、しかもトレーニングの要素(スクワットやランジ、回旋運動の繰り返し)が多く、コンディショニング研修の一環としては良いと思います。
ただ、それだけの理由では国籍も性別も、運動経験も違えば性格も全く違うおよそ140名の新入社員研修に取り入れる理由としてはちょっと弱いので、現地に入るまで「なぜ踊るのか」をどのように伝えれば良いのか悩みました。
結局、自分なりの答えが出たのは踊り切った最後の最後、全チームの発表のあとでした。
以下感想文として
この踊りは普通に楽しい。さらにみんなで踊ると楽しさは倍増します。

楽しいですが、決してラクではありません。でも苦しさはみんなで踊ると半減します。

言葉の壁は、一生懸命身振り手振りで伝えて、どのチームも軽く超えていきました。
運動の苦手な人を、得意な人がサポートすることでチームとしての完成度を上げていくことが出来ました。

なにより、動きを揃えるのではなく心を揃えていくことが出来ていました。
たった数時間の練習でしたが

踊りの完成度とかそんなものは飛び越えて、とにかく感動しました。
この20年、プロのようなチームの踊りも見てきましたが比にならないくらい、感動しました。
見ている人が感動するのは必死に踊っているからです。
上手い下手は関係ないんです。
未完成、未熟なことは恥ずかしい事でもなんでもなく、そこから完成に向かう楽しみがあります。
何事も成長することに喜びを感じます。そしてそういう時の嬉しい顔、輝いた表情、一生懸命な姿が人を感動させる。
だから企業として人材育成は大事ですが、まだ育成途中のひたむきな新人というのは、それはそれで必要な役割を担っているとも言えます。
社会に出るとソーラン節のように数時間であっという間に成長することばかりではないけれど、ゆっくり確実に成長しているということを忘れないで欲しいし、諦めないで欲しい。
その姿を見ている人が必ずいますから。
この先、勤務地はバラバラでまたいつ会えるか分からないですが、確実に「同期」のチームとして心を一つにすることが出来たのではないでしょうか。

僕はなぜこの研修でソーラン節を踊るのか、その「言葉」を探していましたが、言葉ではない熱意とか必死さ、人から学ぶ素直さの方が大事でした。
そういう言葉で表せないものを肌で感じてもらうことが目的だったように思えます。
そういう意味では僕も全員の前で全力で踊りましたし、
指導者のみなさんのチームも全力で踊られました。
その熱意がちゃんと新入社員の皆さんに伝わっていたことが嬉しかったですね。この日一番盛り上がった瞬間でした。
新入社員の皆さんも、指導者の皆さんも、たった2日しか居なかった僕も、みんなで探し物を見つけたような気分です。
150人の総踊り。
当たり前ですが、みんな同じ会社のスタッフです。
この輪の真ん中で、いいなあ、ちょっと羨ましいなあと一瞬思ったのですが、そういえば僕にも仲間は全国に居ます。お客さんではなく、もはや仲間です。いろんな人の顔を思い出して、やはり人の繋がりは宝物だと感じながら踊りました。
すばらしい取り組みだったので先方に許可をいただいて投稿させていただきます。
良い経験を本当にありがとうございました。
また皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。
